9月号 みずたま・独占インタビュー
おとといきやがれ!
9月号 みずたま・独占インタビュー
長野県松本市で、その生涯を過ごしていくという運命を当然のように受け入れている彼女が放つ言葉からは、諦念のようなものは微塵も感じられない。東京への羨望はあるものの、それを「憧れはあるけど」と割り切ることのできる芯の強さで毎日を低空飛行で進んでいく、ひとりの会社員がいた。過去・現在・未来から映し出される彼女の人生論とはーー。
「周りからあまりにも指摘されるので、だんだん恥ずかしくなってきてしまって。だったらいっそ、気にしなくてもいいかって思うようになりました。」
「(東京での)生活に憧れがないということではないですが、生涯こっちでもいいじゃんって。」
「心の中では、東京の人と同じように喋ってるつもりでいるんですけど。」
- 2016年、上半期はどうでしたか?
みずたま:内容の濃い半年でしたね。1月にラブリーサマーちゃんのライブでライブ初めを迎えまして、2月は京都に。teraoka natumiさんの個展へ行ってきました。いつもTwitterで作品の一部は見てるはずなのに、やっぱり現場で見ると、もっと素敵で。teraokaさんご本人も初めてお会いしたんですけど、すごくキュートな方で、素敵でした。3月は東京ででんぱのライブ、4月は新入社員が入ってきて……。上げたらキリがないですね(笑)。
- 充実した半年ですね!特に印象に残ってることってありますか?
みずたま:色んなイベントには行ってますけど、生活に変化が生まれるほどの大きなことってないですね。今までどおりというか。もちろん、行ったイベントはとても楽しかったですよ!
- ライブが好きなんですか?
みずたま:そうですね。特に、でんぱ組.incが好きです。一度、地元の松本市でライブやるってなった時にチケット取ったんですけど、ライブ当日に記録的な豪雪だったせいで延期になってしまって。やけくそになって、弟と妹を公園に連れてってひたすら雪遊びしてました。それが社会人になる直前の3月で。延期といっても、月末からは会社の研修が入っていたので、諦めてました。
そしたら振替公演の日が奇跡的にお休みの日で。こんなラッキーなことってあるんだ!って思いました。その興奮のさなか、初めてでんぱ組.incのライブを見て。ねむきゅん、本当にかわいいなあ・・・!って。
- そもそも、でんぱ組.incを好きになったのはいつからですか?
みずたま:『でんでんぱっしょん』の頃かな。ある日、ビレバンでエッロい雑誌の表紙を見かけて、あまりにもエロかったので、恥ずかしくてそこではちゃんと見られなかったんですけど、あとで調べてみたらそれがねむきゅんで。はぁ、かわいいなぁって。元々、ねむきゅんのことは少しだけ知ってたんですけど、それから意識して追っかけるようになりました。
- 夢眠ねむさんのどういうところが好きなんですか?
みずたま:一番は、かわいいところ。とてつもなくキュートなんですよね。それでいて、知的で、トークも面白くて。ねむきゅんって、でんぱ組.incのメンバーの中でも運動がかなり苦手みたいなんですけど、走ってる姿とかもう、本当にかわいくて。見ているだけでニヤけてしまいます。
私も運動できないタイプなので、「おんなじだー!」って、共感してしまうところもあります。もちろん、でんぱ組.inc そのものが好きなので、ライブも楽しみです。ライブのためなら東京ぐらい行っちゃいます(笑)。
- それにしても、東京によく来ますね?
みずたま:これでも減ったと思いますよ。一時期は、月に1回のペースで来てたから。住んだほうが早いかなって思ったこともあります。松本から東京って、直線距離では約200km。高速バスで行くので、3時間ほど。でも、東京に行くときは決まって楽しみが待ってる時なので、気持ちが早まって、そのぶん、もっと近いように感じます。
- 生まれも育ちも松本ですか?
みずたま:生まれは北海道です。とはいっても、記憶は全然ないんですよね。うんっと小さい頃だったし。だから、方言は松本のが出ちゃう。「そうずら」とか、言っちゃいますね。
- そうずら、ですか? それは「そうだよ」みたいな意味なんですかね?
みずたま:いえ、これは疑問系で、同意を求める時に使う言葉なんです。「そうだよね?」みたいに。東京の友達と喋ってても、とっさに「そうずら?」って言っちゃうことが結構あります。もともと、自分では方言が出てるつもりがなかったんですけど、周りからあまりにも指摘されるので、だんだん恥ずかしくなってきてしまって。だったらいっそ、気にしなくてもいいかって思うようになりました(笑)。
- 開き直ったんですね。
みずたま:はい。ただ、こうして改めて意識してみると、結構恥ずかしい (笑)。松本の方言って、関西弁や博多弁なんかと比べてインパクトが弱いですから。心の中では、東京の人と同じように喋ってるつもりでいるんですけど。実際、東京にもよく行ってるわけですし。
▲ 北海道で見た夕焼け
「就活、しなくちゃいけなかったのに全然してなくて。というか、やり方がわからなかったんですよね。どう頑張ったらいいかわからなくて。」
「一時期、就活って言葉を聞くだけで気持ち悪くなるくらい、就活が無理でした。」
- 東京に住んだほうが早いと思ったこともある、と言ってましたけど。その気はもうないんですか?
みずたま:仕事をやめたら、上京すると思います。
- やめるつもりなんですか?
みずたま:いや、今のところ、やめるつもりはないです。というより、もしかしたら、このままずっと今の職場で働いててもいいんじゃないかなって思ってます。今まで松本で過ごしてきたわけですし。東京での生活に憧れがないということではないですが、生涯こっちでもいいじゃん、って。いつでも遊びに行けますしね。まぁ、気が変わったら考えようかな、と。
- ちなみに、お仕事はどういったことを?
みずたま:いわゆる、普通の会社員ですよ。お菓子屋さんでお菓子を売ってます。和菓子だったり、洋菓子だったり。
- 会社員になろうと思ったきっかけみたいなものってあったんですか? 誰かの影響を受けたりだとか。
みずたま:就活、しなくちゃいけなかったのに全然してなくて。というか、やり方がわからなかったんですよね。どう頑張ったらいいかわからなくて。だから今の会社に決まったのも、すごく遅かったですね。
- 就活をすることに迷いはなかったんですか?
みずたま:うーん、迷いなくというよりは、周りのみんなもやってるからやらなきゃって感じですかね。ゼミの人たちも、「何社受けて何社内定もらって~」みたいな話題ばっかりで。一時期、就活って言葉を聞くだけで気持ち悪くなるくらい、就活が無理でした。結局、4社しか受けなかったし。でも、その中から今の会社に出会えたし、結果オーライかなって。死ぬまで働くぞ!って思える会社に出会えるなんて、幸せだと思います。
「未来のこと考えてるようで、今がよければいいやって感じだし」
「数万円の服なんかを、ポンッと買えちゃうところとか、大人になったな~って思っちゃいます。単純すぎて子供っぽいけど(笑)」
- 学生時代の話が出ましたけど、社会人3年目になって、内面的な変化はありましたか?
みずたま:内面ですか。うーん、ほとんど何にも変わってないかもしれないです。未来のこと考えてるようで、今がよければいいやって感じだし。そういう意味では、常に現状に満足してるのかな。内面よりも、外見とか価値観とかのほうが変わってきたと思います。
- 昔と比べて何か大きく違うところってありますか?
みずたま:経済力ですね。とはいっても、安月給だし、一人暮らしだし、おかね全然ないんですけど。だけど、やっぱり、アルバイトとは違うなって。数万円の服なんかを、ポンッと買えちゃうところとか、大人になったな~って思っちゃいます、単純すぎて子供っぽいけど(笑)。
- 学生モードから就活モードにすぐシフトできたとのことですが、一方で、小さい頃は夢とかありました? 憧れていた職業とか。
みずたま:えー!なんにでもなりたかったですよ! 学校の先生に、看護師さん、ケーキ屋さんに、お花屋さん…。女子が憧れるやつ全般(笑)。
でも、今の仕事でケーキ売ってると、ふと、小さい頃にケーキ屋さんになりたかったことを思い出して、さりげなく、夢叶ってるな、と(笑)。
- ケーキ屋という夢はケーキを売ることで結果的に叶いましたが、他の夢については実は今でも思い描いていたりしますか?
みずたま:いや~ないですね。まったくないです。さっきも言ったんですけど、現状に満足してるので。それに、一生かけて働くぞって思えるくらいの会社で働けているわけですし。そう思わせるだけの雰囲気があるというか。人間関係も良いんですよね。しょっちゅう飲みに行ったりカラオケ行ったりしてます(笑)。
- それは素敵ですね! お酒は飲むんですか?
みずたま:梅酒をよく飲みます。あんまり強くないけど。
- 酔うとどうなるんですか?
みずたま:あんまり気持ち悪くなったりはしなくて。はてしなく楽しい気分になります。愉快ですよ!昨日も飲みに行ったんですけど、そこで偶然、元彼に会ってしまって。もう1年以上会ってなかったんですけど、酔ったノリでガスト行きました。普通、「酔ったノリで」って言ったら、ホテル行くじゃないですか。それが、ガストっていう(笑)。これ、自分の中でかなりすごく好きなエピソードなんですよね。今度、使おっと。
「中途半端なことって、嫌いなんです。自分のことでも、他人のことでも。だから、本気でやってくれないならいっか、みたいな(笑)」
- 「現状に満足している」と言っていましたが、今が幸せってことですかね。
みずたま:幸せ、というほどではないです。ただ、物足りないとか、何かを変えたいとか、そういう欲求みたいなものがないというか。欲求って、生き物としてはあったほうが良いと思うんですけど、私はなんだか足りてしまっている。ガツガツとまではいきませんが、もっとこう、人間らしくなりたいんですけどね。
- 現状の生活を保つのが大事だと。
みずたま:なんだかんだ言って、それが一番ですかね。
- 今はどんな暮らしをしているんですか?一人暮らし?
みずたま:そうです。もう2年経つんですよ、一人暮らし。
- 2年ですか!もうだいぶ慣れたんじゃないですか? 自炊とか、してます?
みずたま:慣れはしましたけど、自炊、しませんね~(笑)。
- 家にキッチンあるんですよね?
みずたま:あるけど、IHに似ているけどIHじゃない、みたいなやつあるじゃないですか。電気コンロっていうんですか? 私はいつも電熱線ってよんでますけど。電熱線じゃないんですよ、もちろん。
ただ、なんか中途半端ですし、あれ。私、中途半端なことって嫌いなんです。自分のことでも、人のことでも。だから、本気でやってくれないなら、いっか、みたいな(笑)
だから、たまに作るとしても、エサみたいなものしか作ってないです、自分のために頑張れなくって(笑)。
- エサって(笑)。
みずたま:それと、食に執着がないんだなって最近わかったんですよね。お店で美味しいものを食べたら、他の人は「これ美味しい!今度作ってみよう!」ってなるらしいんですけど、私は絶対そんなこと思わないですね。
- なるほど。作るのはプロに任せておこう、みたいな?
みずたま:そうそう!またこのお店に来てこれ食べよう!みたいな(笑)。
- 普段の食事はどうしてるんですか?
みずたま:朝は適当にパン食べて、お昼は会社でお弁当が出るので、それで済まして。夜は食べなかったり、友達と食べたり。家で食べるのって、朝ごはんだけですね。
- なるほど。料理なんかもテキパキこなせちゃうのかなっていうイメージでした。「生活を維持したい」とも言っていたので。
みずたま:維持はできてますよ、だいぶ低空飛行ですけど。
▲ 朝食べたパン
「中学時代は黒歴史です(笑)。」
「負けっぱなしでした。」
- 実家は飲食店でしたよね?
みずたま:そうです。お店が安定するまではずっとおじいちゃんおばあちゃんに預けられてました。
- みずたまさんが生まれてから、お店が開店したってことですか?
小学生だった時です。私の誕生日が開店記念日なんですよ!
- それはすごい!
みずたま:そのせいで、お店の1周年記念日は誕生日ケーキが食べられなかったんです。お店で出してる地味なガトーショコラをひと切れに、ロウソク一本で『おめでとう!』みたいな。ショックでしたね(笑)。そのあと一年間、ずっと引きずってうるさく言ってたら、次の年の誕生日はすごく豪華にしてくれました(笑)。風船で飾り付けしてくれたり。ケーキはホールになっていたり。
- 素敵なご両親ですね。そもそも、娘の誕生日を開店記念日にするなんて粋ですよ!
みずたま:今なら粋とか素敵とかわかるんですけど、当時は、なんで同じ日にしたんだよ!って思ってたかな(笑)。大切な日なので、親を一人占めしたかったんだろうけど。
- それだけ大変ということかもしれませんね。結果として、お店はうまくいってるわけですよね。両親の頑張る姿を見ながら育ってきて、今後は自分で飲食店や商売をやったりっていうのは考えてますか?
みずたま:自分でやろうとは思わないですね。いつか、両親のお店を手伝うこともあるのかな~とは思ってましたけど、つい最近、父親から「死ぬまで今の会社で働け!」って言われたので、それなら、まぁいっか、って思ってます(笑)。
- 家族仲が良さそうですね。長女でしたっけ?
みずたま:はい、長女です! 下に2人いますけど、一人っ子歴が長かったせいで、兄弟がいるって言うと意外に思われることが多いです。
- 兄弟と年が離れてると、可愛くて仕方がないって言いますよね。実際どうですか?
みずたま:可愛かったですね、その当時は(笑)もう可愛くないです!お店が忙しいお母さんの代わりに面倒をみてたので、小さいママって意味で「ちいママ」って呼ばれたりしてました(笑)。
- ちいママ(笑)。ご両親もお店があると大変でしょうから、そういう意味では、兄弟にとっては大きな存在だったかもしれませんね。家では頼れるお姉さんキャラですが、外ではどうですか?たとえば職場なんかでは。
みずたま:職場ではずっとふざけてます(笑)。「仕事はできるのに仕事以外だとなんでこうなの!?」ってよく言われるんですよね。自覚はないんですけど(笑)。
- 職場の人間関係も良好そうですね! 今までのお話の中で、みずたまさんは、他の人との関わりの中で力を発揮するタイプなのかなって思いました。
みずたま:ほんとですか?(笑)。うれしい!
- 今までで、リーダーシップを発揮したような経験ってありますか?
みずたま:いやぁ、それがないんですよ。何事もテキトーなので(笑)。そういうの向いてないんですよね。
- 意外ですね。そもそも、学生時代はどんなタイプでしたか?
みずたま:中学時代は黒歴史です。ずっと好きな人がいて、6回くらい告白して、6回くらい振られて(笑)。負けっぱなしでした。
- それはすごいですね(笑)。中学時代のエピソードを全てカバーできそうなインパクトがあります。
みずたま:そうなんですよ。でもこれ、オチがあって。
- はい。
みずたま:中学時代には振られっぱなしだったその人に、高校一年の時に、逆に告白されたんです!
- 粘り勝ちですね!
みずたま:勝ちです!! すごい嬉しかったし、結果としてOKして付き合ったんですけど。あんだけ振られたし、今度はこっちから振ってやろうかなっていう考えが頭をよぎりました(笑)。
- あはは。 芯が強いんですね!
みずたま:だって悔しいじゃないですか!
- 結果として、OKだったのなら良いじゃないですか(笑)。
みずたま:私は打たれ強かったからいいけど、彼が打たれ弱ければ、ここで振ったらもおしまいかなって思ったんです(笑)。
- ある種の駆け引きですね。高校時代~大学時代はどうでしたか?
みずたま:高校~大学は決まった友達とずっとつるんでましたね。量より質なんですよ、友達。
▲ うどん
「変化って、嫌いかもしれないですね。良い方向に変われば最高ですけど、現状より悪くなるかもしれないじゃないですか。」
- 同じ友達とずっと一緒だったというのも、先ほど言っていた「現状維持」というのもそうですが、あまり変化していくことに興味はないんですね。将来もなるべく、今と変わらない生活を望んでいるんですか?
みずたま:変化って、嫌いかもしれないですね。良い方向に変われば最高ですけど、現状より悪くなるかもしれないじゃないですか。それが怖いのかもしれないです。
- 難しいところですよね。それで、自分は変わらないぞって思ってたら社会の方が変わっちゃってたり。ずっと松本で暮らすつもりなんですよね? 東京は好きですか?
みずたま:とりあえずは松本のままですね。なにか大きな変化があれば、東京に行こうかな? 仕事やめたりとか。死ぬまでやめないって言ったばっかりですけど(笑)。仕事やめたら、しようと思ってること多いんです! 髪の毛染めるのと、上京するっていうのが、実は2大目標なんです!
- 変わらないぞという気持ちでありながらも、どうせ変わるのならば大きく変わってやるぞって感じですかね。
みずたま:その通りです、まとめるのがお上手ですね!ありがたい(笑)。
(撮影:みずたま)
みずたま ( @MZTM5 ) - 会社員
北海道生まれ。幼い頃から長野県松本市で暮らし、飲食店を始めた両親の背中を見て育つ。東京に憧れ毎月のように通い続けるも、生涯に渡り、居心地の良い松本で生活していくことを見据えている。2013年、お菓子屋さんに入社し、日々を淡々と続けている。